イオン飲料とむし歯

小児のむし歯は過去20年にわたり確実に減少している。
これは養育者などの口腔保健に対する関心が高まった結果と考えられるが、ここへきて新たな問題が発生している。
小児は口腔管理のよいグループと悪いグループに大別され、悪い方の群では本来むし歯になり難い下の前歯がむし歯になってしまっているのである。この傾向は乳幼児のみでなく学童にも認められている。
そしてこの原因の1つとしてイオン飲料の飲み方が関係していると考えられている。イオン飲料の飲ませ方の問題点と対策について考えてみましょう。
テレビのコマーシャルなどにより、多くの母親は市販されているイオン飲料は身体によいと考えている。汗をかいたときや、入浴後やのどが渇いたときに積極的に与える傾向がある。
イオン飲料の組成は経口維持輸液に比べ、他などの電解質はやや低値かほぼ同程度であるが、浸透圧が高値のため水電解質の吸収の点でやや劣るが、下痢や嘔吐による軽度の脱水に使用される。
普通の食事をしている乳幼児にこれを与えると電解質が多くなりかえってのどが渇いてしまう。その結果、イオン飲料を絶えず飲んでいなければいられない状態となってしまう。
イオン飲料は経口維持輸液よりも糖分の濃度が高く甘味がより強いので、習慣化する傾向がある。
もう一つの原因として下痢や嘔吐で小児科医を受診したときに、輸液が必要でない軽度の脱水の場合は、医療用の経口輸液穎粒は水に溶かしてから使用しなくてはならないので,医師から市販のイオン飲料を勧められることが多い。
しかし脱水が改善した後はイオン飲料による水分補給は必要ないという指導は殆ど受けていない。親はイオン飲料を水代わりにいくら与えても身体によい飲み物と思うばかりでなく、子どもも欲しがるので、それから後も,積極的に与え,習慣化してしまう。
イオン飲料を多量与えることは肥満の原因となるばかりでなく、食欲不振など全身に悪影響を与える恐れもある。

対策として下記にあげるられることを実践していきましょう
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過激な運動や極端に汗をかいたとき以外は普通の水を与える。
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イオン飲料を水の代わりに使用しない。
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下痢や嘔吐でイオン飲料を飲ませたときは症状が軽快したら中止する。
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のどが渇いたときは普通の水を飲ませるようにする。
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寝る前や寝ながらイオン飲料を与えないようにする。
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夜中にのどが渇いたときには水を与える。
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入浴後は水を飲ませる。
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寝る前に歯を磨く。
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やむを得ず,寝る前や寝ながら与えるときは水を飲ませる。
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あるいは,与えた後に綿棒や指先にガーゼを巻き口腔内を清拭する。