​エナジードリンクを飲む子供の異変

近年、若者を中心に人気が広がる「エナジードリンク」

 


10代の子どもが自動販売機やコンビニで買える清涼飲料水だが、よく飲んでいる子どもたちの心身の異変を懸念する声が教育現場から上がっている。

 

 

静岡県に住む中学3年生のツバサ君(仮名)は、1日1本以上エナジードリンクを飲んでいた中学1〜2年生の時を振り返る。

 

 

当時は周囲から「人が変わった」と言われていたという。入学当初はどちらかというとおとなしい生徒だった。

 

ツバサ君が初めてエナジードリンクを手に取ったのは小学校卒業からまもない時期。

 

 

最初は体がだるいと感じた時にときどき飲む程度だったが、中1の冬頃から毎日飲むようになる。カフェイン量のより多い商品を選ぶことが多くなった。

 

「モヤモヤした気持ちを消したくて、寝たくないから飲む。夜10時ごろに飲んで1時間くらいして効いてくると、もうじっとしてられない。スマホでチャットしたり、テンションの高い曲を聴いたりして、気づいたら朝という感じ」

 

この時期のツバサ君の様子を、小学生時代からツバサ君を知る保健室の養護教諭は「彼本来の姿じゃなく、おかしいと感じていた」という。

 

 

このような心身の異変は、ツバサ君に限らない。全国の養護教諭から、エナジードリンクを常飲する子どもたちについて、懸念の声が上がっている。

 

アンケート結果で「自分の学校に、エナジードリンクを習慣的に飲んでいる子どもがいる」と答えたのは、中学で24.4%、高校では48.4%だった。

 

 

自由記述欄では「問題がある子どもを把握している」という趣旨の回答が80件あった。

 

こうした回答を寄せた養護教諭の協力を得て、子どもたちへの取材を行った。冒頭のツバサ君もその一人だ。

 

東京都内の中学校。3年生の女子生徒は、受験勉強のため、エナジードリンクを1日2〜4本飲んでいた。

 

 

頭痛や頻脈が頻繁に起こるようになり、勉強をやめて、夜通しポルノ描写のある映像を見ては「私もやりたい」などと保健室で口にしだした。

 

 

「エナジードリンクを飲まないとやってらんない」

 

 

その言葉に依存を疑った養護教諭が諭すと、生徒は「それでも手が出ちゃうの!」と叫んだ。

 

 

養護教諭や友人らが説得を続け、生徒が飲むのをやめると、次第に異変は落ち着いていったという。

 

そもそもカフェインは、コーヒー(1杯あたり約65mg)やお茶など多くの嗜好品に含まれる。だが、清涼感のある炭酸飲料であるエナジードリンクは「子どもの手が届きやすい」と複数の養護教諭が指摘する。

 

 

代表的なエナジードリンクのカフェイン含有量は、レッドブルが250ml缶で80mg、モンスターエナジーは355ml缶で142mgだ。

 

市場調査会社の富士経済によると、国内のエナジードリンク販売額は2007年からの10年でおよそ34倍に伸びている。

 

養護教諭や生徒への聞き取りを整理していくと、子どもがエナジードリンクを摂取する目的は、おおよそ二つに大別される。

 

一つは勉強やスポーツのため、もう一つは日常の息苦しさ・生きづらさを紛らわせるため、だ。

 

まず前者の勉強やスポーツ。中学や高校、特に進学校では、テスト勉強や受験勉強を機にのめり込む生徒がいるという回答が複数あった。

 

筆者が会った都内屈指の進学校である私立高校に通う1年生女子は「高校受験の時に、進学塾の大学生の先生から『飲んだら集中できるよ』と勧められて飲み始めた」と取材に答えた。

 

カフェインは昔からコーヒーなどの嗜好品に入っている天然の成分だから、たいしたものじゃないという先入観が一般にある。

 

米国精神医学会の医師らによる医学書『アディクション・ケースブック』によると、カフェイン中毒の特徴的な症状としては、興奮/不安/ふるえ/頻脈/利尿/胃腸系の障害/痙攣/不眠がある。

 

 

さらには、黙っていることができず話し続けたり異常な妄想にとらわれたりといった、躁病に似た症状も見られるという。

 

カフェインの血中濃度が最大になるのは摂取から1時間以内で、その濃度が半減するまでの「半減期」は、成人でおおむね2〜7時間だ。

 

そこで問題となるのが、子どもにおけるカフェインの作用だ。

 

国立成育医療研究センターの和田友香医師は、「代謝酵素が未熟な子どもの場合、カフェインの半減期はもっと長く、新生児の場合は100時間以上かかる」と警鐘を鳴らす。

 

「子どもにとってタバコやお酒は危険だと誰もが思うでしょうが、カフェインも同じ。中毒になりかねないものなのに、あまりに知られておらず啓発もされていないのが現状です」

死亡例でも子どもと成人ではカフェインの摂取量で違いがある。

 

カナダ保健省は2010年、13歳以上の青少年や成人について1日に体重1kgあたり2.5mg以上のカフェインを摂取しないようよう、注意喚起を行った(12歳以下はさらに少量)。

 

 

日本では独自の基準値を設けず、農林水産省や内閣府の食品安全委員会が、カナダのこの数値を引用して「過剰摂取には注意が必要」と示している。

 

この基準値に照らすと、「モンスターエナジー」の場合、355mlの缶1本分にカフェイン約142mgが含有されているため、体重56kg未満の子どもは1日で飲みきると基準を超える計算になる(カフェイン2.5mg×体重56kg=140mg)。

 

米国精神医学会の診断基準(DSM-5)によれば、カフェインには「依存性」はあるものの、使用そのものを治療の対象としなければならないような「依存症」はないとされる。

 

 

つまり、カフェインの過剰摂取は様々な問題を引き起こすものの、「十分に教育して理解すれば自分の意思でやめられるはずだ」と見なされている。

 

だが、社会的な背景を含めて考えると、そう単純なわけではないと指摘する研究者がいる。精神科医で国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部長の松本俊彦氏だ。

 

松本氏は、「カフェインは、薬理学的には覚せい剤と同じく気分を高揚させるアッパー系ドラッグの一種」だと言う。

 

たとえば受験生や進学校に通っているような子どもの場合、「ちょっとでも気を抜いたらライバルが迫ってくるのでパフォーマンスを維持しないといけない、というものすごいプレッシャーの中で生きている子たちにとって、エナジードリンクは大きな必要性がある」と松本氏は解説する。

 

松本氏が最も不安視するのが、日常の息苦しさ・生きづらさを紛らわせるための摂取だ。

 

いじめ、暴力、家庭内の不和、貧困など、身近な問題やトラウマを抱えている子どもの場合、カフェインをなかなかやめられないという。

 

健康な子たちであれば、エナジードリンクもすぐ飽きるかもしれない。

 

 

しかし、つらい境遇を抱え、やっとこさ表向き普通の中学生をやっているような子たちは、飲むとすこし気分がスッキリする。そこで、ハマっちゃうんだろうなと。つまり快感じゃなくて苦痛の緩和こそが、子どもを依存症にさせるのです。

 

 

エナジードリンクの販売のあり方については、世界保健機関(WHO)欧州事務局が2014年、小児・青少年へのエナジードリンク販売の規制を提唱しており、すでに取り組みを始めた国もある。

 

日本でもたとえばコンビニでアルコールの販売エリアを分けているようにエナジードリンクも別枠にするとか、15歳以下や、せめて小学生への販売はダメとか、どんなことができるか広く議論したらいい。

 

一方で、それ以前に考えなければいけない大事なことがある、とも言う。

 

エナジードリンクにはまる子どもたちは、カフェインというターボチャージャーをつけてやっと普通の子になれると思っている可能性がある。

 

 

そんな彼らからすれば、大人に無理やり取り上げられたら『もう人並みに生きていけない』という絶望感が生まれる。

 

 

そういう子たちを救うためには、『ありのままでいいんだよ』というメッセージをいかにいろんな形で伝えられるかと考えることも必要です。

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